もちもちの猫のほつれた右手

だいたい付き合っているヒモの話 不定期更新

「ああ、神様。どうしてわたしに、籠の開け方を教えたのですか」

※『リズと青い鳥』 感想 かなりネタバレを含みます。

 

このセリフを聞いたときに、こんなにも尖ったセリフが人にはかけるんだと羨ましくなった。と、同時に泣いた。あんまりにも苦しくて。

 


『リズと青い鳥』ロングPV

 

響け!ユーフォニアム』は吹奏楽アニメで有名ですが、本作はその中の一部であるアニメ映画です。今更見ました。ユーフォニアム見てなくても十分楽しめます。根拠は私。あと百合好きはぜひ。浄化されます。

 ユーフォもドロドロの人間関係で有名になっていたと思いますが、本作もそれにもれず、発言の裏にある思考とか、少しの間とかでリアリティのある会話劇を楽しめます。そういった読み合いが好きな人、だいたいこういうストーリーだろうな、って読めた後にそれを綺麗に描写して踏襲していく気持ちよさが好きな人、吹奏楽やってた人、中高生時代に親友と呼べる女の子がいた人、あと純粋に百合厨は(もう見ているだろうけど)全員見ろ。

 

あらすじ

明るく元気で人の輪の中にいるフルートのエース、希美と、口数の少ないおとなしいオーボエのみぞれ。もともと仲の良いこの二人が「リズと青い鳥」という童話を元にした曲を演奏する中で、関係性を変えていく物語。

 

僕が思うこの映画の見所

「愛しているから手放さなきゃいけない」「愛しているから決断を尊重したい」という思いは、きっと誰もがどちらかくらいには覚えがあるけれど、それは自分自身の特別だと誰もが思っているから、誰にだって刺さるんだと思う。

この映画では最初、明るい希美のあとをひょこひょこと付いて回るみぞればかりが、希美のことを愛していて、希美とずっといたい、そばにいたいという思いが痛々しいほど描写される。けれど、中盤以降、実際はみんなの輪の中にいても希美だってみぞれを愛していて、自分がみぞれの足かせになることを理解していることがはっきり描かれる。

「私、みぞれみたいにすごくないから。普通だから」

「みぞれのオーボエが好き」

そういって、オーボエの才能を開花させていくみぞれと一種の線引きを希美はするのだ。

それは「リズと青い鳥」のなかで、鳥の青く美しい翼をこれ以上奪うことをやめようと、そう決断するリズの姿に重なるのでした。

 

「ああ、神様。どうして私に、籠の開け方を教えたのですか」

というのは改めて美しい台詞で、明るく取り繕うのがうまい希美が、唯一暗い欲望を口に出すのに相応しいんですよね。言葉の選び方の全てが。

 

他にも、上履きを履く時の動作や歩き方、会話の一つ一つ、髪を触る癖、階段での構図、フルートの反射する光などなど、描写としてもものすごく手間がかかっていて美しいです。さすが小説原作、本当に細やかです。あと演奏シーンで普通に泣けます。上手くて。

 

行間を読み解く描写が多いので、退屈だと感じてしまう人がいるかもしれません。小説を読むような映画が好きな人はぜひみてみてね。

あの女同士の暗い執着を含んだ友情と愛情の間の感情がすごく好きです。